脂質異常症(高脂血症)/内科
2019/09/12
目次
生活習慣病である脂質異常症(高脂血症)を予防するために
脂質異常症は生活習慣によって引き起こされる病気で、以前は「高脂血症」と呼ばれていました。
健康診断で「コレステロールが高い」「中性脂肪が高い」と指摘を受ける患者さんも少なくありません。
コレステロールや中性脂肪が高いとなぜよくないのか、脂質異常症にかかるとどんな症状がみられるのか、その原因や予防法をご紹介します。
脂質異常症(高脂血症)とは?
脂質異常症(高脂血症)は、血液中のコレステロールや中性脂肪が基準よりも多い状態のことをいいます。
血液中の脂質の濃度が高い状態だと、動脈硬化を引き起こしやすくなり、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高くなります。
また、高血圧の人が脂質異常症(高脂血症)を発症すると、動脈硬化が進行するおそれがあります。
さらに、インスリンが不足すると中性脂肪は体内で利用されにくくなるため、血液中に中性脂肪が増えます。
そのため、糖尿病患者の方は脂質異常症(高脂血症)を引き起こしやすく、高血圧の方や糖尿病の方は治療を行う必要性が高くなります。
コレステロールとは
コレステロールは、全てが有害というわけではありません。
コレステロールとは
- 細胞の膜
- 性ホルモン、副腎皮質ホルモン
- 胆汁酸(たんじゅうさん)
を作る元となる脂肪分です。
肝臓で作られたコレステロールを全身の組織に運ぶ粒子を「LDL(悪玉)コレステロール」といい、組織で余ったLDLコレステロールを肝臓に運んで処理するための粒子を「HDL(善玉)コレステロール」といいます。
コレステロールは増えすぎると動脈硬化の原因となる恐れがあります。
LDLコレステロールを回収する働きのある善玉コレステロールには、動脈硬化を予防する働きがあることといわれています。
また、コレステロール値は遺伝します。
中性脂肪(トリグリセライド)とは
中性脂肪(トリグリセライド)とは、人間が活動するためのエネルギー源であるブドウ糖が不足した場合に、それを補うものです。
この中性脂肪(トリグリセライド)が増えすぎてしまうと、悪玉コレステロールが増加してしまいますので、中性脂肪(トリグリセライド)の値にも注意が必要です。
脂質異常症(高脂血症)のタイプ
タイプ | 基準値 | 原因 |
---|---|---|
高LDLコレステロール血症 | 140mg/dL以上 | LDLコレステロール |
境界域高LDLコレステロール血症 | 120~139mg/dL | |
低HDLコレステロール血症 | 40mg/dL未満 | HDLコレステロール |
高トリグリセライド血症 | 150mg/dL以上 | 血清トリグリセライド |
※日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012」より
脂質異常症(高脂血症)の中でもとして代表的な3タイプをご紹介します。
1.高LDLコレステロール血症
肉類や乳製品など動物性脂肪が多く含まれた食品、卵や魚卵などコレステロールが多い食品などをよく食べる方や、1日の摂取カロリーの基準を大きく超えたカロリー過多の方にみられる症状です。
動物性脂肪が含まれた食品の過剰摂取によって、悪玉コレステロールが多すぎる状態になります。
この悪玉コレステロールの値は、脂質異常症であるかどうかを知るための重要な数値です。
健康診断で計測される値ですので、しっかり確認しておきましょう。
2.低HDLコレステロール血症
運動不足や肥満、喫煙などが原因で、善玉コレステロールが少なくなってしまう状態です。
善玉コレステロールが少ないと、血液中から余分なLDLコレステロールを回収できないため、動脈硬化のリスクが高くなります。
悪玉コレステロールの数値だけではなく、善玉コレステロールの数値も確認しておきましょう。
3.高トリグリセライド血症
食べ過ぎや飲酒の習慣、間食などによる慢性的なカロリー過多によって引き起こされる状態です。
アルコールを飲み過ぎると、中性脂肪が増えやすくなるため注意が必要です。
中性脂肪が多い状態では悪玉コレステロールが増えやすくなります。
脂質異常症(高脂血症)をそのまま放置してしまうと、増えすぎた脂質が血管内に溜まり、動脈硬化になり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすきっかけとなります。
脂質異常症(高脂血症)の予防方法
脂質異常症(高脂血症)の予防には、生活習慣を見直しながら、血液をサラサラにすることで脂質異常症(高脂血症)のリスクを下げることができます。
日常生活改善のポイント① 動物性脂肪の摂取を控える
肉類や乳製品、揚げ物などを控え、肉類を食べる際には、ロースよりも脂身の少ないヒレ肉を、鶏肉の場合は皮を食べないようにするなどの工夫をしましょう。
また、青魚に含まれる不飽和脂肪酸には、悪玉コレステロールを減らす働きがあります。
青魚であるサバやイワシにはその成分が多く含まれています。
さらに、納豆や豆腐などの大豆食品には中性脂肪を減らす働きがあり、食物繊維にはコレステロールを減らす働きがあります。
イモ類や根菜類、キノコ類、野菜類、豆類、海藻なども積極的に摂取したい食品です。
飲酒の習慣がある方は、できるだけアルコールを控えるように心がけましょう。
ビールなら1日大瓶1本、日本酒なら1合、ワインならグラス2杯程度が適量といわれています。
日常生活改善のポイント② 運動を習慣付ける
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動が中性脂肪を下げる効果がありますので、1日10分から20分程度を、2回から3回行うことをお勧めします。
このような運動が難しい場合は通勤時間を利用し、1駅分歩いたり、自動車を使わずに徒歩で買い物へ行ったりと、歩く機会を作ることは効果的です。
脂質異常症(高脂血症)になってしまったら・・・
動脈硬化がすでに起きていて現在治療中の方、糖尿病や高血圧で動脈硬化が起こりやすい状態の方、遺伝的に高コレステロール血症などで動脈硬化を起こしやすいことが明らかになっている方などは、より気をつけなければいけません。
悪玉コレステロールの数値が高い、善玉コレステロールの数値が低いなど、脂質異常症(高脂血症)の疑いがあった場合、先にご紹介した予防方法がそのまま対処法としても有効です。
食事の改善や運動を習慣づけても、症状が改善しない場合は、医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。